トップページ 》 会報【ねろりでげんき】の目次 》 ねろりでげんきNo.29




季節の変わり目(立春・立夏・立秋・立冬)の前の18日間を『土用』といいますが、東洋医学では立秋の前の土用(今年は7月19日〜8月6日)を『長夏』とも呼び胃・脾(膵臓に近い意味)に要注意の時期としています。そして胃・脾の影響を受けやすい部位を『肌肉(脂肪に近い意味)』としています。ですので、今回は脂肪について書きます。
  ダイエットしてもなかなか効果が出ない方や逆にいっぱい食べるのにちっとも太らない方がいます。この差は遺伝とか色々と理由はありますが、今回は脂肪の役目からお話しをします。
脂肪と一口に言っても、どこにどのように付くかによって、落ちやすさ(燃焼のしやすさ)が違ってきます。脂肪をざっくり分けると美容の大敵『皮下脂肪』、病気の根源『内臓脂肪』、そして最近注目されだした『異所性脂肪』の3つです。
  『皮下脂肪』や『内臓脂肪』というのは、きちんと脂肪細胞の中に納まって脂肪組織を作ります。これらの脂肪細胞は大人になるまでにその数がだいたい決まってしまい、減る事はありません。なので成長期に脂肪細胞を増やしてしまうと体質的に太りやすくなってしまいます。
(大人でも目いっぱい脂肪細胞を太らせると、分裂して数が増える事があります)
 
3つめの『異所性脂肪』とは、脂肪細胞の中に納まらずに他の臓器(肝臓・筋肉の線維内・心臓・膵臓など)に溜まったり、筋肉の線維の間に脂肪細胞として付く脂肪です。
飽食の今では脂肪は厄介者扱いですが、本来は身体にとって必要なものです。ですので、その働きによってつく場所と燃焼のしやすさなどが変わってくるようです。落としにくい順にいきます。
第1位『皮下脂肪』 皮膚と筋肉の間の“あれ”、付く場所によってはセルライトなんて呼ばれたりしています(セルライトという特別な組織はありません)。嫌われ者の皮下脂肪には大切な役目が多くあります。まずは身体の保温材、寒いときは燃焼して熱を出して体を温めます。サウナやエステで揉んで脂肪を減らそうとする方がいますが、それだけでは脂肪が燃焼したわけではありませんので脂肪は減りません(血行が良くなって多少は燃えやすくなるかも……)
  保温以外にも臓器の保護や女性ホルモンなどのホルモン分泌などの役目があります。そして長期的なエネルギー源として飽食でない世界ではとても大切、だから脂肪の中では最後の方で使われるので、そんなに簡単に落ちないようになっています。減らす為には、時間がかかっても根気よく運動・特に有酸素運動、食べ過ぎない、風邪をひかない程度の薄着です。
第2位『内臓脂肪』 お腹の中にある腸間膜(ちょうかんまく)という腸を固定する膜を中心に内臓周りに蓄積します。これがお腹だけが出てしまうポッコリお腹の原因ですね。役目は、内臓を支えて定位置に固定する事と、ホルモンも分泌しているようです。そして、皮下脂肪よりも短期的なエネルギー不足を補うエネルギー源です。だから、皮下脂肪よりも先に燃える脂肪なので、運動・食事などの効果がでやすいです。
第3位『異所性脂肪』 筋肉や他の臓器の中にあります。内臓にあるのは脂肪細胞に治まりきらずに溢れている脂肪で、脂肪細胞が少ない方は溜まりやすいようです。だから、大食い・運動不足なのに太らない方は特に要注意です。太らないから良いのでなく、これが溜まると糖尿病予防に大切なインスリンの働きを悪くし血糖値を上げ、溜め続けると肝臓は脂肪肝、膵臓なら膵炎と生活習慣病に一番関係の深い脂肪です。溢れ出た物なので食事を改善すると良い効果がでます。(病気になってしまうと厄介ですが…) 
  筋肉に付く場合は2パターンあって、筋線維の間に脂肪細胞としてつく場合
【目に見える霜降り部分です】と、筋線維の中につく場合【赤身に取り込まれているので顕微鏡でやっと見えます】です。筋線維内の脂肪の役目は即効性のあるエネルギー源、身体がエネルギー不足になると真っ先に使われる脂肪、1日の間でも食事と運動量で変わります。という事は最も落としやすい脂肪、運動でテキメンに減らす事ができます。
  内臓に付くのは食事で、筋肉に付くのは運動が一番です。
  なお、筋肉の線維間につく脂肪細胞
(霜降り肉の脂)はまだ細胞組織がどうやって出来るのか何のためにあるのかよく解っていないことが多く、今回は除外です。
ついつい見た目で『皮下脂肪』を最初に邪魔者にしてしまいますが、一番悪玉になりそうなのは『異所性脂肪』。見た目は太ってないからと安心せずに、健康的なお食事と適度な運動はやっぱり大切ですね。





「脂肪を燃やすのは、有酸素運動で無酸素運動では痩せない」なんて事を聞いた事ありませんか? それって本当でしょうか?
それを考えるには、まずその違いですよね。無酸素運動とは、その名の通り酸素を使わない運動、全力疾走や重量挙げみたいに思わず息が止まるぐらいの激しい運動の事です。こういう運動は、急に多くのエネルギーを必要とするので、手っ取り早く使える肝臓や筋肉に蓄えた糖(グリコーゲン)を使って、酸素を使わなくても出来るエネルギーを急ピッチで生産します。だから、酸素がいらないのです。
  でも、この方法では直ぐに糖が足りなくなってしまうし、エネルギーを作る時の副産物の乳酸が溜まってしまいます。乳酸は次の段階でエネルギーとして使われるのですが、使われるより出来てしまう方が多いと筋肉のお荷物になってしまいます。
穏やかな運動は急激にエネルギーが必要ではないので、酸素や脂肪を使ってゆっくりエネルギーを作り出します。これが有酸素運動、待望の脂肪燃焼です。
もちろん無酸素運動中も有酸素でのエネルギーの生成を行っているのですが、それは割合として少ないので脂肪が燃え出すまで続けるのは大変です。例えば全力疾走を3分間続けるなんて事は、よほど身体を鍛え上げた方じゃないと無理です。
  それに比べジョギングなどの緩やかな運動は5分、10分と続ける事が可能ですし、最初から酸素と脂肪を使ってのエネルギー生成となるので、ごく普通の方が脂肪を燃やすのには適しているのです。なお、有酸素運動でも糖が必要ですので、効率良く脂肪を燃やすには炭水化物も食べた方が良いようです。
では、どの程度が有酸素運動と言うのでしょうか? 有酸素運動は酸素が必要ですので、まずしっかり呼吸の出来る動作というのが大切で、通常の呼吸よりも弾むぐらいがちょうど良いです。息が止まったりゼイゼイと呼吸が乱れるのは無酸素運動になっています。一回に長く続けなくても5分ぐらいの短い時間でも、身体がぬくもるぐらいの動作を続けると脂肪は燃えます。そういう動作を一日に合計20〜30分程度できれば効果が期待できます。(もちろん食べ過ぎは禁物です)
今回は、家の中でも簡単にできる有酸素運動をご紹介しましょう。
踏み台昇降。階段を一段を上がったり降りたり、階段の代わりに雑誌などをガムテープで巻いてステップ台を作るのも一つです。ステップ台の高さは膝に無理がこない高さで。
その場で駆け足。ジョギングするペースでその場で駆け足をします。モモは息が切れない程度でしっかりあげましょう。縄跳びを跳んでるつもりのエアー縄跳びもありですね。
エアー自転車。仰向けになって脚を上げて自転車をこぐように足を回してみましょう。脚を90度に上げるよりも少し下げた状態でする方が負荷がかかり、腹筋にも効果があります。ただあまり脚の位置が低いと息が止まるので、その辺りは無理なく続けられる位置で。
もちろん無酸素運動も痩せるためには無駄ではありません。エネルギーの消費を上げてくれるのは筋肉、筋肉をつけるには有酸素よりも無酸素運動の方が効率良くつくので、併せて行えればそれがベストです。


 表面で『異所性脂肪』を完全に悪者扱いしましたが、“長距離ランナーにとっては違う”という面白い研究結果があります。普通の生活の人と長距離ランナーが、同じ脂っこい食事を食べたとします。すると、長距離ランナーの方が筋肉の線維内に脂肪が溜まる(脂肪筋)量がずっと高くなります。ただ、普通の人はそうなるとインスリンの働きが悪くなり血糖値が上がりますが、長距離ランナーは脂肪筋になってもインスリンの働きは良いまま(むしろ良く働く)なので、血糖値は安定してます。これをアスリートパラドックスというのですが、長距離ランナーにとっては筋線維内の異所性脂肪【霜降りの脂じゃない方】は大切なエネルギー源、これが無ければ良い成績はでないらしいです。 
  長距離ランナーは日々の練習で身体の機能が長距離を走るのに適したように進化したのですね。つくづく人間の身体ってすごいな〜って思います。



HOME TOP ┃ PAGE TOP ┃ 会報の目次




Copyright(C) 2007〜 活法整体&アロマセラピー ねろり. All rights reserved