
■季節の変わり目(立春・立夏・立秋・立冬)の前の18日間を『土用』といいますが、東洋医学では立秋の前の土用(今年は7月19日〜8月6日)を『長夏』とも呼び胃・脾(膵臓に近い意味)に要注意の時期としています。そして胃・脾の影響を受けやすい部位を『肌肉(脂肪に近い意味)』としています。ですので、今回は脂肪について書きます。
■脂肪と一口に言っても、どこにどのように付くかによって、落ちやすさ(燃焼のしやすさ)が違ってきます。脂肪をざっくり分けると美容の大敵『皮下脂肪』、病気の根源『内臓脂肪』、そして最近注目されだした『異所性脂肪』の3つです。
■飽食の今では脂肪は厄介者扱いですが、本来は身体にとって必要なものです。ですので、その働きによってつく場所と燃焼のしやすさなどが変わってくるようです。落としにくい順にいきます。
■第2位『内臓脂肪』 お腹の中にある腸間膜(ちょうかんまく)という腸を固定する膜を中心に内臓周りに蓄積します。これがお腹だけが出てしまうポッコリお腹の原因ですね。役目は、内臓を支えて定位置に固定する事と、ホルモンも分泌しているようです。そして、皮下脂肪よりも短期的なエネルギー不足を補うエネルギー源です。だから、皮下脂肪よりも先に燃える脂肪なので、運動・食事などの効果がでやすいです。
■第3位『異所性脂肪』 筋肉や他の臓器の中にあります。内臓にあるのは脂肪細胞に治まりきらずに溢れている脂肪で、脂肪細胞が少ない方は溜まりやすいようです。だから、大食い・運動不足なのに太らない方は特に要注意です。太らないから良いのでなく、これが溜まると糖尿病予防に大切なインスリンの働きを悪くし血糖値を上げ、溜め続けると肝臓は脂肪肝、膵臓なら膵炎と生活習慣病に一番関係の深い脂肪です。溢れ出た物なので食事を改善すると良い効果がでます。(病気になってしまうと厄介ですが…)
筋肉に付く場合は2パターンあって、筋線維の間に脂肪細胞としてつく場合【目に見える霜降り部分です】と、筋線維の中につく場合【赤身に取り込まれているので顕微鏡でやっと見えます】です。筋線維内の脂肪の役目は即効性のあるエネルギー源、身体がエネルギー不足になると真っ先に使われる脂肪、1日の間でも食事と運動量で変わります。という事は最も落としやすい脂肪、運動でテキメンに減らす事ができます。
■「脂肪を燃やすのは、有酸素運動で無酸素運動では痩せない」なんて事を聞いた事ありませんか? それって本当でしょうか?
■穏やかな運動は急激にエネルギーが必要ではないので、酸素や脂肪を使ってゆっくりエネルギーを作り出します。これが有酸素運動、待望の脂肪燃焼です。
もちろん無酸素運動中も有酸素でのエネルギーの生成を行っているのですが、それは割合として少ないので脂肪が燃え出すまで続けるのは大変です。例えば全力疾走を3分間続けるなんて事は、よほど身体を鍛え上げた方じゃないと無理です。
■今回は、家の中でも簡単にできる有酸素運動をご紹介しましょう。
●踏み台昇降。階段を一段を上がったり降りたり、階段の代わりに雑誌などをガムテープで巻いてステップ台を作るのも一つです。ステップ台の高さは膝に無理がこない高さで。
表面で『異所性脂肪』を完全に悪者扱いしましたが、“長距離ランナーにとっては違う”という面白い研究結果があります。普通の生活の人と長距離ランナーが、同じ脂っこい食事を食べたとします。すると、長距離ランナーの方が筋肉の線維内に脂肪が溜まる(脂肪筋)量がずっと高くなります。ただ、普通の人はそうなるとインスリンの働きが悪くなり血糖値が上がりますが、長距離ランナーは脂肪筋になってもインスリンの働きは良いまま(むしろ良く働く)なので、血糖値は安定してます。これをアスリートパラドックスというのですが、長距離ランナーにとっては筋線維内の異所性脂肪【霜降りの脂じゃない方】は大切なエネルギー源、これが無ければ良い成績はでないらしいです。
長距離ランナーは日々の練習で身体の機能が長距離を走るのに適したように進化したのですね。つくづく人間の身体ってすごいな〜って思います。