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前回『痛みは身体に何か起きているぞ、早く対処しなさい、というシグナル』と『筋肉痛は筋線維を修復する痛み』というような話を書きました。これらの場合は明らかな原因がある時のこと。「この頃あっちもこっちも痛いの」とか「最近、ちょっとした痛みも絶えられない……」そんな声もよく聞きます。今回は、そんな痛みの原因はもしかしてこれかも……という事を書いてみました。
痛みは「異常があるぞ」という情報を脳が神経から受け取って初めて「痛い!」となります。解り易い例が、局所麻酔で手術を受けている時です。意識があって頭では自分の身体が切られていることが解っていても、「痛い」という感覚の情報が神経回路を通って脳に伝わらなければ、痛いという事を感じません。
  椎間板ヘルニアなどの腰痛で神経ブロック注射をすることがありますが、これも痛みの伝達を抑えるものです。運動神経は遮断しないので身体は動き、痛みの信号は途中で抑えられるのでは和らぎます。「注射してもちっとも治らない」と言われる方がいらっしゃいますが、治しているのではなく感じなくしているだけなので当然なのです。でも、痛みが和らぐと気持ちも楽になり、ゆっくり眠れるので、それが治っていく元になります。
(痛みが和らいだからと言って、無理すると返って悪くなりますよ)
さて、上記の『異常があるのに痛みを感じない』のとは逆に、『病院の検査では「異常がない」と言われたのに痛みを感じる』場合があります。これは『痛みとは脳が感じるもの』だからこそなのです。上記で『病院の検査では異常がない』と書いたのは、決して錯覚というのではなく、見方によれば異常と考えられる場合もあるからです。
『痛み』の脳への伝わり方を簡単に書きます。身体には痛みを感じる感覚受容細胞っていうのがいっぱいあります。その細胞に刺激があると「異常があるぞ」という信号を出します。でもこの信号が小さいと神経を伝わっていきません。この信号は1か0で、痛みの強さは信号がいっぱいでるかどうかで変わり、1回の信号の大きさは関係ありません。
  たとえると走り高跳びのバーみたいなボーダーライン(痛みの「閾値」といいます)があって、そこを越えないと次(神経)に伝わらないのです。走り高跳びのバーを高く跳んでもギリギリで跳んでも跳べれば一緒、でもどんな惜しくてもひっかかればそれで終わりってことです。痛みの強さは、凄い勢いで何回も信号が出る時に酷い痛みとして伝わります。
この痛みを感じるボーダーライン(閾値)は、人によってもその体調によっても変わります。とっても嫌な・悲しいことが続いた時や、たった一回でも酷く辛い・怖い目にあった時などは、閾値が下がって、感覚がとっても過敏になる事があります。こんな時は身体の防衛力が過敏になるからかもしれませんが、それまで問題がなかった刺激を痛みとして末梢神経に、そして中枢神経に伝えてしまいます。これは痛みの刺激だけでなく熱いとか冷たいとかいう感覚が過敏になる場合もあります。痛みがあると、とってもストレスですよね。ストレスを抱えると交感神経が優位になり、自分を攻撃してくる物に対して身構えている状態=様々な刺激に対して敏感な状態になるので、ますます閾値が下がり、悪循環に入ってしまいます。『心因性の〇〇痛』というのもこの場合があるかもしれません。
この状態を抜け出すのには、副交感神経をしっかり働けるようにする事です。副交感神経の働きは食べ物を消化・吸収し身体に必要な栄養素を準備します。そして栄養分など修復するために必要なものを、異常が起きている所に血液にのせて送り込みます。
 
また、良い睡眠が取れれば、成長ホルモンもしっかり出るので(成長ホルモンは身体の修復にも必要です)異常がある部分の修復が進みます。過敏だった神経も閾値が上がり治まってくるでしょう。
痛み止めの薬は直接悪い所を直すのではないですが、痛みのストレスを軽くして交感神経を静め、身体を癒やすモードにするには有効です。でも、できることなら副交感神経が働きやすい環境をつくりたいものです。ゆっくりとお茶したり好きな音楽を聞いたり…「忙し過ぎてそんな時間はとれない!」と言われる方は、一日に何度か深呼吸するだけでもいいです、それだけでもかなり身体は変わってくると思います。




東洋医学では『春』と最も関係の深い感情として『怒』としています。春は気候の変動が大きく自律神経が乱れやすいだけでなく、生活・仕事などの環境が変わる方も多く、慣れない環境でイライラする事も多いかもしれません。さて、怒っている時は、「許せない」とか「嫌だ」とか「もう絶えられない」っていうような事があって怒るんですよね。まさか、リラックスしていたり楽しい時に「怒り」の感情は起きないですよね。(もしそのような方は、まず心療内科に) 早い話、何らかのストレスを感じているから怒りを感じるのだと思います。
ストレスたっぷりの状態、いわゆる『戦闘態勢』なので、交感神経がフル稼働している状態です。「許せない」「酷く不快だ」と思うと、脳からの指令で、副腎髄質という器官からアドレナリンとノルアドレナリン、副腎皮質からコルチゾールというホルモンが血液の中に分泌されます。コルチゾールは前回のお話なのでアドレナリンとノルアドレナリンの説明を簡単にします。
ノルアドレナリンは、血管を収縮して血圧を上げ、戦えるように一気に筋肉に血液を送るように身体に作用します。アドレナリンも同じ働きがありますが、更に骨格筋の血管は拡げて筋肉が最大パワーを出せるようにます。また心臓が頑張って働くように作用するので心拍数も上がります。頭にも血液がガンガン送られます。これこそ頭が「カッカッ」した状態ですね。怒りが爆発して手足で攻撃してしまうと大変です。また、血圧が上がると心臓に負担をかけるので、血圧の高い方がひどく怒るのはとっても身体に危険な事です。
表面でも書きましたか、交感神経が過敏になるとちょっとした不快な事象にも過敏になるので、ますます怒りっぽくなりますし、痛いや気持ち悪いやら不快な感覚にも敏感になります。どこかでこの悪循環を断ち切りたいものです。そのために自律神経のバランスが交感神経側に偏りがちの時は、表面の話しと同じになりますが、副交感神経側に向くようにする事が大切かと思います。
それから、怒りっぽくならないようにするには、即効性は無いかもしれませんが、長い目で見れば食事も大切です。例えばカルシウム。神経の伝達には不可欠で、食物から吸収できる量が不足すると、自分の骨を溶かしてでも神経の方に回すぐらい大切な物。だから不足するとイライラが起きると言われてます。
カルシウムと合わせと取らないといけないのがマグネシウム、興奮した神経を静める働きがあります。また、カルシウムにもいくらか欠点があるのですが、その欠点を補ってくれるのがマグネシウム。だからカルシウムと併せてマグネシウムも取りましょう。豆腐・納豆などの大豆食品、アーモンド・ピーナッツなどの種子類に沢山含まれています。バナナも良いですよ。
それからビタミンB1も気分を安定させるのには大切です。脳の栄養=グルコースを脳が使える形に変えるにはビタミンB1が必要です。脳が栄養不足に陥ると精神が不安定になってしまいます。ビタミンB1は豚肉(ハム含む)、米ぬか(ぬか漬)、大豆などに沢山含まれています。
脳が糖質不足になるとイライラするので、甘い物も効果はあります。美味しいスィーツを食べると幸せな気分になりますよね。ただ、これは言うまでも無く、糖分は“ほどほどに”ですね。


 さて、こんな心理学の実験をご存知ですか? 机の前に座り、両腕を机の上にのせ、右腕でも左腕でもかまわないので、どちらかの腕を衝立で見えないようにします。例えばそれが右腕として、目の前には右腕の代わりにマネキンの腕を置き、その腕をじっと見つめるようにします。で、向かい合わせに座った人が、マネキンの腕を筆などでコチョコチョします。自分の腕でもないのに、くすぐったいような変な感じがしてくると思います。背中がモゾモゾするぐらいこそばい感じがしてきたところで、正面の人が急に筆を金槌に持ち替えてマネキンの腕を「バンッ!」て叩きます。そしたら、殆どの人が思わず右腕を引っ込めたり、自分の腕を叩かれたかのような衝撃をうけます。自分の腕じゃないのに……。人間の感覚って見ているだけで他(人)の感覚も貰ってしまったり、かなり複雑です。



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